租税特別措置法と節税 1億円の損失? 儲かっているのにお金がない?
節税コンサルタント、税理士の高橋寿克です。
困っているということでお客様から紹介された社長さんとの会話
社長:「税金が高くてお金がないんだよ。」
私 :「きちんと節税すれば、本当に儲かってお金が余るまで、それほど税金は高くならないはずなんですが」
社長:「何で儲かっているのにお金がないのか説明してくれ!」
私 :(資料を見て)
「設備投資がたくさんなされていますね…。節税ちゃんとやっていますか?」
社長:「もちろんさ、うちのえらい税理士の先生にちゃんと見てもらっているよ」
私 :「 (うーん、 …… 、 ん? ん? !!) 租税特別措置の〇○がなされていませんね」
社長:「…?」
私 :「この制度を使えば、年間数千万円所得が減り、資金繰りの問題はなくなりますよ」
社長:「本当かよ!?
そう言えば、昔、その制度を使えるって知り合いが教えてくれたけど、うちの税理士がダメだって言ってたぞ」
私 :「大丈夫です。使えます」
要件をていねいに説明してご納得いただきました。
おそらく、上手に制度を使えば、これまでに1億円以上節税ができたと思います。
社長:「損害賠償もんだな」
私 :「租税特別措置は、使えない税理士の方が多いので、珍しいことではないんですよ。税務署出身のえらい先生なら知らなくてもやむを得ないと思います」
日本の税制は複雑だと言われます。
その上、毎年税制は変わります。
日本の場合、戦後、長きにわたって、財務省(旧大蔵省)がこの国の支配の中枢にいました。
開成高校時代の私よりはるかに優秀な同級生は財務官僚になりました。
(今回の安倍政権は、盟友だった中川大臣の件もあるせいか、財務省を出し抜き、経済産業省等の違うブレーンを使っている珍しい政権だと思います)
財務省の「力の源泉」は、
(1)主計局
予算について決定権を持つ
(2)主税局
税制の企画・立案をする
(3)国税庁(財務省の外局)
企業・個人の情報を収集し、脱税という懲罰を課せられる
この3つにより、国家予算の「入り」と「出」、そして「情報」と「強制力」を持てたことが大きいと思います。
このため、、他の省庁や業界団体に力を持ち、日本の政策そのものが租税特別措置法という税制によって複雑に決められ、変えられる構造になっています。
普通の人がこの税制改正を追いかけ続けるのは難しいでしょう。
おかげで、私たち税理士は仕事になっています。
でも、すべての税理士が、税制改正を追いかけて租税特別措置を適切に使いこなせているとは言いにくいのが現状です。
税理士試験の理論はやや暗記に偏っています。
このため、税理士は法律の条文をきちんと読む訓練が不足します。
また、税理士の平均年齢60歳代で高齢化も進んでいます。
これらが複合して、条文の読み間違えも起きるのです。
税務署出身の税理士の方の場合、元々、税額を追徴するための教育はされますが、税額を減らすための節税対策を教育されることはあまりないでしょう。
さらに、税務署長など、出世してえらかった方は、途中から管理業務が増えて、税法の実務からは早めに離れる傾向があるとお聞きしています。
(もちろん、中には税務署出身でも勉強熱心な方もおられ、税理士法人TOTALでも手伝っていただいています)
毎年、12月に税制改正大綱が出ます。新聞・TVでもさわりは報道されますが、100ページ超の文章を毎年、早く読んで、必要な対策を考える、お客様にお伝えするのが、年末の私の仕事です。
だんだん細かい文章を読むのはつらくなってきましたが、まだまだあと10年は専門家・技術屋として頑張りたいと思っています。